ボケは難しいです

あ、あの……はじめましてです。
銀誓館学園中等部三年の長瀬三月と申します。

……その……何を話したらよいでしょうか？（困り顔）

（アシスタントと書かれた札を首に下げたモーラットがカンペを渡す）

ええと、それでは……私の近況についてお話させていただきます。
学園祭まであと少しですね。
こういう普通の学園生活って初めてなので、なんだか緊張します。
今まで土蜘蛛の巫女として修行をする日々を送っていましたので、こういうことは不慣れなものでして……。
あ、でも、いつまでも適応できないのはおかしいですよね。
酉谷先輩や高崎先輩には色々とお世話になっていますし、クラスの方達も仲良くして下さいます。
毎日やることがたくさんあって、初めて見るものも多くて、とても充実しています。
まだまだ不十分なところも多いですが、一生懸命頑張りたいと思います。（ぺこり）

……えっと、まだ時間があるんですか？　それじゃ……。

（優一が『そこでボケて』と書かれた紙を掲げる）

え、ボケ……？
その、それは……いったいどうすれば……（おろおろ）

（すかさずモーラットが優一にツッコミパチパチ火花）

ええ？　高崎先輩っ！？　だ、大丈夫ですか！？
はうぅ……私、どうしたら……。（微妙に涙目）

（政吾郎が三月の肩をぽんと叩いて、気にするなと言いたげな視線で見る）

……う……すみません、次はもっとボケられるよう、頑張ります……。

（それはなんか違うと、政五郎が背後で呟いていたりする）

キャンプ行ってきたよ～♪

たっだいま～♪
あ～、キャンプ楽しかったな～。
ゴカイはばしっと倒しちゃったし、依頼も大成功！
いやホント楽しい二日間だったよ～。
詳しい内容はこちら～♪
【キャンプで告白タイム？　それはゴカイです！】⇒http://t-walker.jp/sr/adventure/rp.cgi?sceid=2518

三：依頼って……高崎先輩、遊びに行ってただけじゃなかったんですか？
行く前にあんなにはしゃいでたから、てっきりそれだけかと……。
あ、いえあの、先輩が遊んでばっかりだとか依頼なのに緊張感がないとかそういうこと思ってたわけじゃ……。

政：……すごく思ってる。ついでにはっきりと言っちゃってるぞ。（ぼそり）

三：え、ええ！？　あ、あのあの、ついそのぅ……は、はうぅ……。（わたわた）
ええと、あの……ごめんなさいっ！　そういうつもりじゃ……。（しゅん）

あはは～♪　気にしなくていいって～。（へらへら笑いつつ三月に手を振って見せた）
ほら～、マサっち君が余計なこと言うから。

政：オレのせいっ！？　……その、なんだ……スマン。

遊んできたってのは、かなり大きいんだけどね。
せっかくの機会だし、楽しんで帰らないともったいないでしょ。
俺はいつでも全力で楽しむことにしてるんだ～♪
海はいいね、ちっちゃいカニとかヤドカリとか、自然がいっぱいでさ～。
捕まえようとしたら、おもいっきり指を挟まれちゃった～。
あ、そうそう。カント君って水は嫌いみたい。
波打ち際でちょろちょろして、ちょっとだけ足を水につけてすぐひっこめたりとか……。それがまたかわいくてね～♪
でねでね、他にも色々あってさ～……。（それから1時間近くキャンプの話が続く）

三：（やっぱり遊びに行っただけにしか見えないです……）

キャンプでホイ♪

キャンプ、キャンプ～♪　キャンプだホイホ～イ♪

明日と明後日、海にキャンプに行ってくるよ。
……っていっても、遊びだけじゃなくて、ゴースト退治のお仕事なんだけどね～。
それでもキャンプはキャンプ！
楽しみだなあ、キャンプファイヤー。あと海水浴も～。
向こうに着いたらすぐ遊べるように、水着は服の下に着ていこ～っと♪

政：水着で行くのはいいが、パンツ持っていくの忘れたとか、そーゆー古典的なボケはするなよ。

……あ……危なかった～……。ついうっかり♪
気がついたから、リュックに詰め詰め～♪
いや～、気づいてよかったね～。

政：……やれやれ（汗）

ＧＴ行ってきたぜ

新しいゴーストタウンが見つかったみたいだな。
一人じゃ戦力的にヤバイんで、ゆーいっちゃんと行ってきたぜ。
ゆーいっちゃんは……あれマジメにやってんだろうか。
どーして、ギターマシンガンなのに特攻するんだよっ！
意味ないだろ！　射撃武器のっ！！
装甲紙なんだから前出るなって！！！

優：えぇ～、だって最前列で演奏したほうが盛り上がるでしょ～。

うるせぇっ！！
しかし、アイツのほうがオレより攻撃力あるってどーゆーことだよ。
だってギターだぞギター。どう考えてもチェーンソーのほうが強いと思うんだが……。

三：えっと、かみをばらばらにする……でしたっけ？　はうぅ……恐ろしいものなのです。（びくびく）

なんでそんなネタ知ってんだ三月ちゃん。
なるほど、ゆーいっちゃんか教えたのか……。どーりで。
ネタだから本気にしないほーがいいぞ。

で、まあ、ふざけてるのかマジメなのかはビミョーだが、なんだかんだいっても頼りになる仲間だしな。
カントの治癒能力にもホントマジで助かってるし。
だけど、オレのほうが強いこともある。特に体力面ではな。
一人じゃどーしようもないことも多い、お互い補い合っていくってのが大切だな。
と、きれいにまとめてみるぜ！

フリスペ×グレモ

俺とカント君の日常～♪
あ、カントってのは、俺の愛モラのことだよ～♪

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「む～、数学嫌～い……さっぱりわからないって～。」
珍しく数学の教科書を広げて勉強中の優一。くせの強い髪をがりがりと掻きながらため息を漏らす。
優一は理系科目全般が苦手である。一応高校生のたしなみとして授業には出るものの、授業中は寝たりぼーっとしたりと、まじめな高校生にはあるまじき授業態度。
授業中でさえこんな態度なので、予習や復習をまじめにやるわけもなく、当然成績のほうはひどいものである。先日あった中間試験では、数学１０点というとんでもない点数をとってしまったくらいだ。
そんな彼が自主的に勉強をしているのは、さすがにこれではまずいと考えたからなのだろうか。
いや、そうではない。このくらいで勉強を始めるような性格なら、テスト前くらいは勉強をするだろう。
１００％カン頼み。鉛筆を転がして答えを占い、明日は明日の風が吹く。テスト結果など人生において些細なことだと、心の底から平然と言ってしまう図太さと図々しさを持った高校生が、たかだか赤点一つで性根を入れ替えるだろうか。

彼が机について教科書を開いているのは、それ以外の理由がある。
優一の膝の上で丸くなって目を閉じているグレートモーラットのカント。一見寝ているようにも見えるが、よく見ると耳をぴんと立て、決して寝ているわけではないことがわかる。
「ね～、カント君。そろそろ遊びに行こうよ？　ほら、いい天気だしさ～。」
語尾を上げた軽い口調で、優一は自分の使役ゴーストに話しかける。使役する側であるはずなのに、どことなく伺うような感じがする。
その言葉に、モーラットは薄目を開けると前足でぺちぺちと主人の膝を叩く。
まるでできの悪い子どものオカンのように、カントが優一の勉強の見張りをしているのだ。
「ええ～、もう勉強飽き……ふぁ～い。ちゃんとやりますよ～。」
不満げな声をあげたが、優一はシャープペンシルを持ち直すとまた教科書にむかう。
膝の上をキープすることで、こっそり優一が遊びに行けないように。モーラットなりに考えた方法である。
今のところその試みはうまくいっている。ときおりごまかして勉強から逃げようとはするものの、一応は机について数学に取り組んでいるようだ。
モーラットは自分の作戦の結果に満足そうに目を細めると、ふさふさした尻尾を振り、また膝の上で丸くなる。

しかし所詮は使役ゴースト。どんなに嫌がろうが、主人の意思で自由にイグニションカードに戻してしまうことは可能である。本気で遊びにいこうと思えば行きたい放題。
それをしないということは、優一が別にいうほどはこの状況を嫌がってはいないということだ。
カントが自分のことを心配していること、できるかぎりの何かをしたいと思ってやっていること。その気持ちは優一に伝わっている。
だからこそ、だ。自分はそれに応えたい。
「たまには、こういうのも悪くないかな。」
カントには聞こえないようにそっと呟くと、空いてるほうの左手でモーラットの頭を軽くなで、数学の問題に取り組み始めた。

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